写真家土門拳は、昭和20年代後半から30年代初頭にかけて、精力的にこどもを撮影しました。こどもたちがカメラを意識せずに自然な表情を見せるまで待ち、時間をかけて写していたといいます。
家の外で生き生きと遊ぶこどもたちが、町にあふれていた時代。無心に遊ぶこどもたちの姿と笑顔は、幼い日々の記憶を蘇らせるだけでなく、時代を超えて私たちに力と希望を与えてくれます。
土門拳 (1909~1990)
明治42年(1909)、山形県飽海郡酒田町(現・酒田市)に生まれる。写真館の門下生を経て昭和10年(1935)、「報道写真」を掲げる名取洋之助主宰の「日本工房」に入社(~14年)、対外宣伝誌『NIPPON』を中心に海外へ日本を紹介する写真を撮影。以後、脳血栓で倒れる昭和54年まで激動の日本を記録。『風貌』『古寺巡礼』『文楽』など人物や日本の伝統美を追求する一方、被爆者の実態に迫る『ヒロシマ』、閉山に追い込まれた炭鉱の困窮を訴える写真集『筑豊のこどもたち』を発表。1950年代に街頭で群れ遊ぶこどもを集中的に撮影する。昭和56年、毎日新聞社が土門拳賞を創設。昭和58年、全作品を寄贈し、故郷の酒田市に日本初の写真美術館として土門拳記念館が開館。